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腹腔鏡下小切開手術

腹腔鏡下小切開手術(ミニマム創内視鏡下手術)のご紹介

健康保険では「腹腔鏡下小切開手術」という名称が正式ですが、以前から使われている「ミニマム創内視鏡下手術」のほうが広く知られています。同じ手術ですが、ここでは「ミニマム創内視鏡下手術」という言葉を使ってご説明します。
ミニマム創内視鏡下手術は、目的の臓器がやっと取り出せる程度の小さな一つの傷(ミニマム創)をあけ、この傷だけから手術操作を行い、この傷から臓器を取り出します。(図.1)CO2ガスを使わず、腹腔内の操作を極力避け、高い安全性を保ち、低コストで行なう、泌尿器科領域に特化した低侵襲手術です。当科では主に副腎・腎・腎盂・尿管・前立腺に発生した癌に対する手術として用いています。(図.2)
ミニマム創内視鏡下手術は国立東京医科歯科大学附属病院泌尿器科で開発され、幾多の病院で発展してきました。当科の泌尿器科医師は全員、東京医科歯科大学泌尿器科またはその関連病院で手術のトレーニングを受けています。内視鏡を用いて行いますが、開放手術の利点と腹腔鏡手術の利点をともに活かし、両者の欠点を解消あるいは軽減することを目指しており、以下のような優れた点を有します。

低侵襲

泌尿器科で扱う臓器のほとんどは後腹膜腔と呼ばれる、腹腔(胃や腸が入っている腔)の外の領域にあります。超高齢社会では腹部手術の既往のある患者さんの増加も想定され、高齢者が術後早期に食事を始めるためにも、手術を行う空間を後腹膜腔に限定し、腹腔内を操作しない手術が望ましいと考えられます。そのことにより、術後腸閉塞のリスクは解消され、将来行われるかもしれない腹腔内手術の支障になりません。また、可能な限り創を小さくすることで、疼痛を軽減し、翌日より歩行可能となることは高齢者にも一層望ましいと考えられます。

低コスト

日本では高齢化が急速に進んでおり、医療を必要とする人口の著しい増加、就労人口の減少、さらに新規医療の著しい高額化(特に癌医療)、医療経済の悪化、所得格差の拡大などが問題になっています。良い医療を貧富の差無く受けられる医療制度の崩壊が危惧されており、「良質かつ低コスト」はこの状況への最適な対応のひとつと考えられます。腹腔鏡手術やロボット手術で用いるトロカーポート(器具を通す小さな孔)を使わないため、これを通る高価な使い捨て器具は不要です。また、使い捨て器具の廃棄コストも不要になります。
コストの面では一般に、

  • 開放手術では手術コストは低く、入院コストは高い。
  • 腹腔鏡手術・ロボット手術では手術コストは高く、入院コストは低い。
  • ミニマム創内視鏡下手術では手術コスト、入院コストともに低い。

高い安全性

本手術は、開放手術の発展形であり、開放手術で培われた技術が継承されており、開放手術で行なわれてきた泌尿器科手術の多くはミニマム創手術で行うことができます。
創から挿入した内視鏡で拡大視および全員での観察を行ないます。また同時に創からの直視で立体視と俯瞰視を併用することで安全性を高めます。さらに創の長さは状況に応じて即時に微細に調整(延長)できるため、患者さんの状況に合わせた低侵襲と安全を図ることができます。
全国の多くの病院で行われ、高い安全性が証明されています。

CO2削減

低炭素社会すなわち「CO2削減」は、世界の社会・経済構造を変える潮流となっており、家庭レベルから国際レベルまで様々な取り組み(CO2の排出規制、排出権取引、地下埋設処理、エコ住宅の義務化、炭素税の導入案など)がなされています。医療界も例外ではありません。個々の低侵襲手術のCO2排出量はわずかであっても世界の総計は大量となり、低侵襲手術にCO2を用いれば、その普及に伴ってCO2は増加することになります。ミニマム創内視鏡下手術では、操作を行う空間はCO2ガスではなく解剖学的剥離面を展開することで確保します。CO2ガスの注入(気腹)を行わないため、患者さんに生ずる呼吸・循環系を中心とした様々なリスクやガス塞栓などの致死的なリスクは回避されます。超高齢社会では、呼吸・循環機能に障害を持つ患者さんの増加が予測され、CO2を用いない手術が今後より求められると考えられています。
また使い捨て器具など医療廃棄物の焼却におけるCO2排出も削減されます。

参考:http://www.tmd.ac.jp/med/uro/practice/cure/mies.html
   http://www.minimumendo.jp/gaiyou.html

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