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用語集 Glossary 用語集Glossary

脳血管内治療

脳血管内手術(カテーテル手術)

脳の血管の病気を切らずに治す

脳の血管の病気には大きく二種類あります。出血性疾患(クモ膜下出血、脳動脈瘤、脳動静脈奇形、脳内出血など)と虚血性疾患(脳梗塞、動脈の狭窄など)です。これらの病気の中で、カテーテル手術が大活躍をするものがクモ膜下出血、脳動脈瘤、脳動静脈奇形、超急性期の脳梗塞(おかしいと思ってから8時間以内に治療開始)と脳に行く血管の狭窄(詰まりかかった水道管)です。また、血管の病気以外にも、脳腫瘍を栄養している血管を開頭術が安全に行えるように詰める事も積極的に行っています。

くも膜下出血は広く知られる病気となりました。この病気になると、半分以上の患者さんが、死亡するかまたは重度の後遺症(寝たきり、車椅子生活など)を抱えると言われています。原因は脳の血管にできたこぶ、脳動脈瘤の破裂です。未破裂、即ち出血前の脳動脈瘤は、特殊な例を除いて症状が出ません。以前は、くも膜下出血になってはじめて、病院受診となっていたのですが、最近では、脳ドックなどによって見つかる事が増えてきています。未破裂脳動脈瘤が破裂する危険性は日本の全国調査では1%程度とされていますが、動脈瘤の大きさや形状、できた部位などにより、個々の患者さんで抱える危険性が異なります。私たちは、これらのデータを元に、患者さん個々人に情報提供を行ない、患者さんの置かれている社会背景(仕事の事、ご家族の事)なども考慮して、患者さんとともに治療方針、様子観察が良いのか手術をするのか、を決定するようにしています。手術の方法には開頭手術と血管内手術があります。開頭手術は頭部の皮膚・筋肉を切開して、開頭(頭蓋骨を一旦外すこと)し、脳の隙間を分け入って、直接脳動脈瘤にクリップをかけます。古くから行なわれている方法で、動脈瘤の根治性が高い、極めて優れた方法です。血管内手術は「切らずに治す手術」です。この方法はカテーテル手術とも呼ばれています。具体的には、太ももの動脈からカテーテルを挿入し、そのまま血管の中を通して目的の動脈瘤の中に進め、動脈瘤をコイル(ミクロ技術の柔らかい金属コイル)で詰めてしまう方法です。傷がつくのは挿入部分だけです。くも膜下出血になった場合には、脳動脈瘤を治療するだけではなく、その後に起こる合併症を治療することも大切です。脳血管攣縮(脳の血管が異常に細くなり脳梗塞を起こしてしまう)は最も恐い合併症で、これに対しても積極的に血管内治療を導入しています。

図1-1.脳底動脈の動脈瘤です。
灰色は詰めたコイルです。
動脈瘤は映らなくなっています。
図1-2.
しっかり詰めるために脳血管用のステントも使いました。
図2-1. くも膜下出血。動脈瘤の破裂です。 図2-2. 大事な血管を残しながら治療しました。

脳梗塞は、文字通り一分一秒を争う病気です。おかしいことに気がついているのに様子を見ていたら、その先に待っているのは寝たきりです。当院では脳梗塞治療のために、常に最新器材を揃え、24時間体制を布いています。脳の主要な血管が詰まった場合、静脈からの薬だけでは太刀打ちできないことがあり、血管内手術が大きな効果を挙げることがあります。

図3-1.
脳底動脈が詰まって昏睡状態。
このままでは呼吸も危ない。
図3-2.
塞栓を除去した直後からお話ができるようになりました。
昏睡状態から生還です。
図3-3.取れた血栓です。2014年7月から導入の新しい血栓除去器材です。

動脈の狭窄は、脳梗塞予備軍で、治療が必要です。最近は内服薬が良くなり、薬だけで予防できることが多くなりました。それでも、病気が進むと手術が必要となることがあります。頚動脈内膜剥離術、バイパス術はもちろんの事、血管内手術のステント留置では、まだ広まっていない最新の機器により薬剤の効果も確認しつつ、安全、確実な治療ができるようにしています。また、狭窄病変が急に詰まってしまうこともあります。その場合でも迅速に対処いたします。

図4-1.
元々あった首の動脈が
詰まってしまった。
このままだと大きな脳梗塞。
図4-2.
ステントを留置して何とか再開通。
でも、中に血栓がついてしまう。
あきらめずに治療。
図4-3.
粘って、粘って血流復活。
翌日の造影CTでの確認です。
強く白い線はステントです。
図5-1. 
髄膜腫。血管が豊富で手術中に出血しやすい腫瘍です。
図5-2. 
摘出術中の出血を減らすために、血管内手術で栄養血管を詰めているところです。
図5-3. 
髄膜腫。血管内塞栓術の翌日、手術直前のMRIです。腫瘍にほとんど造影剤が入らなくなりました。手術中の出血はほとんど有りませんでした。

私たちは、医師を含めたチーム全体で良く話し合い、また、高度な治療を必要とする場合や稀有な病気に際しては他施設にも相談し、最も安全で治療効果の高いと思われる方法を患者さんに提示するように心がけています。ここは出口の無い病院ではありません。仕切りの無い開かれた病院です。どうしたらよいか悩まれている方は、一度当科の外来までお越し下さい。一緒に最良の答えを見つけて行きましょう。

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