メニュー

用語集 Glossary 用語集Glossary

放射線治療

放射線治療

背景

日本では現在、生涯二人に一人ががんにかかり、三人に一人はがんで死亡する(年間に30万人余り)といわれています。がんは珍しい病気ではなくなり、平和な世ではありながらピンピンコロリとは逝かせてはくれなくなりました。 さて、ご存じの通りがんに対する治療法は、手術療法、化学療法、放射線療法の3つが主なものです。各々の治療法も進歩してきましたが、日本では放射線療法はないがしろにされている感があります。20世紀でも、西洋ではがんと診断された人の60%-70%が放射線療法を受けているのに対し、日本では25%位にとどまっているとされてきました(図1)。なぜ日本では放射線治療を受けるがん患者さんが少ないのでしょうか。

図1: 日本における放射線治療患者数の推移(2010年の日本放射線腫瘍学会調査)。放射線治療患者数は、21世紀になって徐々に増えてきているものの、西洋諸国に比べるとまだまだ少ない。

現在の放射線療法 (放射線治療)

昔は、がんの診断精度は現在よりもかなり劣っていました。科学の進歩とともに、診断法もCT scan、MRI、PET scanなど、それまでにはなかった手法が登場しました。昔は手術で‘開けてみなければ分からない’状態だったものが、今では手術をする前から分かる状態になりました。放射線治療も診断に基づいて行われていました。その精度は手術よりもはるかに劣っていたのです。しかし、手術標本の顕微鏡学的病理診断には未だ敵いません。従って、放射線でがんを治すなんてとても出来はしないとみられていました。 放射線療法自体もこの間大きく進歩しました。昔は治療対象を影のように捉えた二次元照射(照射野といいました)でした。治療対象外も広く照射されていました。今や三次元照射で治療対象に見合う照射(照射体積といいます)ができるようになりました。多くの場合、二次元照射では向かい合わせで照射していましたが、三次元照射ではいわゆるピンポイントで治療対象に集中して照射できます。照射の基本となる治療装置はリニアックです。

三次元照射と当院の特徴

では、実際には三次元照射でどう変わるのでしょうか。1番目に、副作用が少なくなることです。副作用の多くは、照射する必要がない‘正常’な組織が照射されるからと考えられます。2番目に、治療対象への攻撃力を強くでき、がんを治せる可能性を高くできることです。3番目に、1、2番目の利点を活かしつつ照射期間を短くできることです。この3番目が当院放射線治療の大きな特徴です。

三次元照射の例

二次元照射では、副作用のため1回2.0グレイ前後で、根治的照射には週5回照射で6-7週間の照射期間が必要でした。これが二次元照射の限界と考えられていました。三次元照射では、1回10.0グレイ位で、1週間で治療が完了します。二次元照射の10週間以上の攻撃力に相当し、しかも副作用は軽微です。(肺癌の例: 図2)

図2: 肺癌(cT1N0M0)に対する根治的照射。二次元照射(対向2門照射)と三次元照射(運動照射)の線量分布図。三次元照射では赤く塗った部分が病巣部に集中している。

対症的照射は、二次元照射時代の治療対象の多くを占め、照射線量も目一杯ではありませんでした。がんによる生命の見通しが短かったからでしょうか。当院では、対症的照射といえども三次元照射法でしっかりと照射しています。その結果、骨転移による痛みなどの症状は、全経過を通して軽快していることが多いです。(転移性骨腫瘍の例: 図3)

図3: 骨転移に対する対症的治療。二次での1方向照射と三次元での運動照射による線量分布。三次元照射では対症的治療でも、病巣部(赤線で囲んだ部)にピンポイント照射ができる。

おわりに

放射線治療はかつて敬遠されることも多かったと思います。20世紀までは副作用が多いと思われ、やむを得ない側面もあったかも知れません。しかし今や三次元照射法により、副作用は軽く、根治性は高まり、治療期間は短くできるようになりました。多くは外来通院で、普通は数分で照射は済んでしまいます。放射線治療の適応について、一度主治医に相談してみて下さい。当院では(も)、患者さんから主治医に相談があるとはじめて、主治医から放射線治療医に相談があることになっています。

ページトップへ