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カテーテル・アブレーション

カテーテルアブレーションは、脈が速くなる頻脈性不整脈に対して、心臓の内部にカテーテルを挿入し、頻拍の原因となる異常な興奮を発する部位や異常な興奮が旋回する回路・伝導路を高周波通電により選択的に熱焼灼し、頻拍を根治する治療法です。
対象となる不整脈は、WPW症候群や房室結節リエントリー性頻拍といった発作性上室性頻拍、心房頻拍、心房粗動、(発作性・持続性)心房細動、および心室性期外収縮・心室頻拍です。当院では、原則として局所麻酔下で短時間に安全な治療を行うことを重要視しています。これまでアブレーション治療に関連する死亡に至った合併症は認めておりません。手術時間、入院日数の目安は以下の通りです。成功率もWPW症候群や房室結節リエントリー性頻拍など発作性上室頻拍では99%に達しています。現在でも治療困難とされている心房細動や心室頻拍は、患者さまごとの基礎心疾患や病期(発症してからの時間経過)により成績に幅がありますが、概ね80-90%近い成功率をあげています。

  WPW症候群
発作性上室性頻拍
心房頻拍
心房粗動
心房細動 心室性期外収縮
心室頻拍
手術時間 1-2時間 2-4時間 2-3時間
入院日数 3日間 7-10日間 3-4日間
成功率 95-99% 85-90% 80-90%

発作性上室頻拍症

異常な電気伝導の旋回路が存在するためにおこる頻脈性不整脈で、[1]副伝導路を介する房室回帰性頻拍(WPW症候群)と[2]房室結節近傍にある伝導速度の異なる伝導路間を旋回する房室結節リエントリー性頻拍を主なメカニズムとします。カテーテルで異常な伝導路([1]副伝導路、[2]房室結節遅伝導路)を焼灼することで根治が可能です。

通常型心房粗動

右心房内の三尖弁(右心房と右心室の境にある弁)のまわりを旋回する不整脈です。カテーテルで三尖弁と下大静脈の間を線状に焼灼し、回路の一部を切断することで根治が可能です。

 

心房細動(肺静脈隔離アブレーション)

当院では発作性(あるいは持続性)心房細動に対するアブレーション治療にも精力的に取り組んでいます。心房細動の発生には、トリガー(引き金)となる心房性期外収縮が重要な役割を果たしています。その大半が肺静脈という血管を起源とすることが分かり、左心房の内側から通電を行い、左心房と肺静脈間の電気的伝導をブロックする肺静脈隔離アブレーションが行われるようになりました(図10)。心房細動のトリガーとなる期外収縮が肺静脈から左心房に伝わらないようにすることで、多くの患者さまの心房細動を抑制することができるようになりました。
1998年に国内他施設に先駆けて心房細動アブレーションを開始し、2002年から独自に開発した同側肺静脈拡大隔離アブレーション法(EEPVI法)に移行しています。従来の方法が上下肺静脈の入り口を個々に取り囲むのに対して、EEPVI法は同側の上下肺静脈入り口を一括して大きく取り囲みます(図11)。従来の方法で危惧された肺静脈狭窄といった合併症を回避することができ、肺静脈入口部トリガーによる心房細動治療も可能となりました。心房細動を繰り返すことで生じた電気的リモデリング(心房そのものの電気的性質の変化)の改善、また、自律神経支配の修飾をもたらすといった二次的効果が期待できることも分かってきました。最近では、後述のElectro-anatomical mappingシステム(カルトシステム)を併用してEEPVI法を施行することで、より安全で効率的なアブレーション治療が可能になっています(図12)。

 

 

近年では冷凍バルーンにおいても根治可能となりました。

心室性期外収縮・心室頻拍

器質的な心臓病を持たない特発性のものは、(1)右心室から肺動脈への出口近傍に異常興奮をだす局所起源をもつもの(右室流出路起源)と、(2)ベラパミルという薬が著効し、左心室の中隔に異常興奮の旋回路を有するもの(ベラパミル感受性心室頻拍)を主なメカニズムとしています。異常興奮の局所起源または旋回路に対して通電することで治療が可能です。

Electro-anatomicalマッピングシステム(カルトシステム)

心筋梗塞や心筋症、あるいは心臓手術の既往といった基礎心疾患に伴って発生する心房頻拍・心室頻拍は、異常な電気刺激が旋回すること(リエントリー)が主な原因です。従来の方法では困難であった頻拍回路全貌の同定が、Electro-anatomicalマッピングシステムを用いることにより可能となり、治療成績も向上しています。頻拍に伴い血圧低下を来たし心臓突然死の原因になる致死的心室頻拍に対しても、洞調律時(非発作時)に心臓の内側の電位波高を測定し、頻拍回路を形成する低電位領域を同定し(図13)、さらにその領域内での遅延電位陽性部位(図14)・ペースマップ一致部位(図15)を特定するSubstrate(基質)マッピングといった方法でアブレーション治療が可能となりました。

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