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胃癌

胃癌は日本の悪性疾患における死亡の19.3%(厚生省統計情報部「人口動態統計より」)を占めており、悪性疾患の中心をなす疾患です。
当院における胃癌治療は、日本胃癌学会が作成した胃癌治療ガイドライン(2010年10月改訂)に基づいて行われております。ガイドラインでは、癌の進行度にあわせて治療方針がきめられております(Fig.1)。この癌の進行度は、癌の深達度と転移の程度で決まります。

Fig.1: 治療ガイドラインにおける治療適応

深達度(Fig.2)

癌は一般に粘膜に発生し、徐々にその深さを増していきます。
粘膜下層までにとどまる癌を早期癌と呼び、それより深い癌を進行癌と呼びます。
早期胃癌の内、分化度の良い粘膜内癌(T1a)や粘膜下層500μmにとどまる癌(T1b1)であればリンパ節転移はほぼありませんが、さらに深く粘膜下層に浸潤する癌(T1b2)ではリンパ節転移が15-20%となります。一方、進行癌のリンパ節転移は40-50%です。

Fig.2 癌の深達度分類

転移の程度

胃癌はその進行とともに、胃の周囲へ転移が始まります。 肝臓や肺などへの転移を血行性転移、胃の周囲に存在するリンパ節への転移をリンパ行性転移、胃壁外へ癌細胞がまき散らされるものを腹膜播種とよびます。 リンパ節転移は、その転移個数に合わせて、N0(リンパ節転移なし)、N1(転移リンパ節個数が1-2個)、N2(転移リンパ節個数が3-6個)、N3(転移リンパ節個数が7個以上)と表記します。 上記した深達度Tとリンパ節Nを調べることで進行度が決まります。 また、肝転移などの血行性転移や腹膜播種が見つかると、遠隔転移と診断されStageⅣとなります。

診療の実際

初診までの流れ

健康診断の胃透視検査や内視鏡検査ですでに癌が診断されている場合と痛みや食欲低下などの症状で受診される場合があります。

既に紹介元の施設(診療所や病院)で胃癌の診断がついている場合には、その進行度・治療法にあわせて消化器外科もしくは消化器内科の外来へ紹介となりなす。外科への受診は、毎週水・金曜日に胃疾患専門外来がありますので、専門外来へ受診されることをお勧めいたします。

初診から検査・治療まで

初診外来では、これまでの経緯をお聞きし、検査予約を行います。 既に紹介元から画像検査などを持参された場合には、検査結果を見ながら治療方針の説明ができる場合もあります。 当科で検査を開始する場合は、初診当日にCT検査を行い、まず転移検索を行います(StageIII-Ⅳと診断されれば、同日消化器内科の化学療法外来への受診を手続します)。 さらに、胃カメラなど必要な検査を約10日間で終え、外来で治療方針を説明致します。治療方針にご了承が得られましたら、入院予約となります。初診から最短で2週間程度、遅くとも3週間以内には治療となります。 検査の過程で内視鏡治療が可能と判断された場合には、速やかに消化器内科の内視鏡治療専門医へ紹介致します。内科・外科は常に連携をとっており、どちらの科を受診しても治療方針に偏りはありません(外科を受診したらなんでも手術をしてしまうわけではありませんから、ご安心下さい)。

治療前検査

胃カメラ:

 

胃癌のできている場所、深達度の診断を専門医(日本消化器内視鏡専門医)が行います。
使用する機材は、最新型ハイビジョンスコープ(EVIS LUCERA ELITE)で、拡大内視鏡やNBIを用いて、正確な深達度・範囲診断を行います。
ここで、手術適応と診断した場合、さらにクリップマーキングを行います(Fig.3)。

Fig.3:内視鏡下クリッピング
*当科では、多くの症例が腹腔鏡手術の適応となりますので、
手術中は事前に打ったクリップを内視鏡で確認しながら胃切離を行います。

胃透視検査:

口からバリウムを飲んで、胃癌の位置・大きさを確認します。

CT検査:

 

東芝製330列・マルチスライスCTを用いて1㎜間隔で撮影を行い、正確な転移診断を行います。また、この検査画像を用いてCTangioglaphyを作成します。CTangioglaphyでは、胃周囲の血管走行を確認し、術中にこの画像を見ながら手術を進めるナビゲーション手術を行っております。腹腔鏡手術では胃や胃の周りの血管を手で触ることができませんが、ナビゲーション手術を行うことで、血管走行の誤認を防ぐことができます(Fig.4)。

Fig.4 Navigation Surgery用の3D-CTA画像

大腸スクリーニング検査:大腸に癌が無いか、また胃癌が大腸に浸潤していないかを調べるために行います。大腸のバリウム検査もしくは大腸カメラを行います。この他、血液検査や胸のレントゲン・心電図などを行い、治療の準備を行います。

入院

 

原則的に胃癌治療の患者様は、手術前日に癌センター3階へ入院していただきます。

主な治療法

内視鏡治療

当院では消化器内科が担当しております。切除の方法には、簡便なEMR(内視鏡的粘膜切除術)や広範囲の切除も可能なESD(内視鏡的切開・剥離法)があります。

ガイドラインでは、大きさ2cmを超えない、深達度T1a N0の分化型が標準的な内視鏡治療の適応とされていますが、適応拡大病変に対しても内視鏡治療が行われており(Fig.5)、年間約90例の治療が行われております。

Fig.5:内視鏡治療の適応

特に適応拡大病変では、切除した胃癌の病理検査の結果、追加手術が必要となる場合もあるため、治療前後に消化器内科担当医より詳しく説明をしております。

手術

 

内視鏡治療の適応から外れる早期癌と進行癌が対象となります。
癌の発生した場所、大きさによって切除する範囲が変わります。当科では幽門側胃切除、噴門側胃切除、胃全摘術を主に行っております(Fig.6)

Fig.6 基本的な切除の種類

胃は食事を貯留し消化をする大事な臓器であり、なるべく温存を心掛けております。 特に近年、80歳を超える高齢者の手術患者様も増えており、胃全摘術はなるべく回避するよう治療を行っております。癌の治療ももちろん大事ですが、食事の楽しみも大切なものと考えております。  胃癌の手術は、切除後に新たにつなぎ合わせることが必要です。これを再建術と呼びます。幽門側胃切除術では、ビルロートI法とルーワイ法のどちらかで再建を行います。当院では、再建に多少手間がかかるものの、残胃炎の少ないルーワイ再建を主に行っております。 また、噴門側胃切除術では、主に食道残胃吻合を行っております。切除範囲が1/2と広くなる場合には、逆流性食道炎を予防するためにダブルトラクト再建も行っております。 胃全摘術ではルーワイ再建を行います。ルーワイ再建は国内での標準術式です(Fig.7)。

Fig.7切除後の再建法

リンパ節郭清

胃癌の手術では、転移の可能性があるリンパ節を胃と共に切除します。 このリンパ節切除のことをリンパ節郭清と呼びます。早期癌に対して進行癌では、その郭清範囲が広くなるため、同じ幽門側胃切除であっても手術時間は進行癌のほうが多くかかります。また、リンパ節郭清を目的として膵臓や脾臓を一緒に切除することもあります。リンパ節郭清はその手技の如何より術後の合併症や余命にかかわる、胃癌手術の要であり、当科では開腹手術・腹腔鏡手術のいずれにおいても丁寧・慎重に行っております。

腹腔鏡手術

当院では胃がん手術の約8割が腹腔鏡手術であり、内視鏡手術の専門医(日本外科学会専門医・日本消化器外科学会専門医・日本内視鏡外科学会技術認定医)を中心としたチームで手術を行っており、使用機材もハイビジョン内視鏡システム(オリンパス VISERA ELITE)、新型エネルギーディバイス(オリンパス THUNDERBEAT)と、いずれも最新機器を取り入れております。 適応は原則としてStageIIまでとしておりますが、80歳を超える高齢者や、なるべく術後早期に化学療法を開始する必要のある患者様など個々の患者様の状態によってStageIII以上の進行癌であっても鏡視下手術をご提案する場合がございます。 術式は一般的な幽門側胃切除を初め、胃全摘術・噴門側胃切除術・バイパス術にも腹腔鏡下手術を行っております。腹腔鏡下胃全摘術は難易度が高いと言われておりますが、当院では2004年からこれまでに234例に施行し、安定した成績を得ております。特に難易度の高い腹腔鏡下胃空腸吻合に用いる専用器具(Endo-PSI、Endo-PSI-II、Endo-PSI-Slim)も、当科で開発した器具であり、胃癌専門誌Gastric cancer(2008 Usui S, Nagai K, Hiranuma S, et al)に報告後、日本のみならず韓国や中国などでも使用されるようになりました(Fig.8)。

Fig.8:進行胃がんに対する腹腔鏡下胃全摘術(D2リンパ節郭清・再建終了時)

いずれの手術も、完全鏡視下手術で腹部には5㎜の傷を5か所置き、お臍を開いて胃を取り出します。お臍を再形成することで、体表の傷はほぼわからなくなります。 幽門側胃切除においては、2010年から、さらに傷の小さなTriple Insicion laparoscopic distal gastrectomy(TIL-DG)を開発し、その有用性と安全性に関して Asian Journal of Endosccopic Surgery (Usui S, Tashiro M, Haruki S, Matsumoto A, 2014)に報告しております(Fig.9 -10)。

 

Fig.9:TIL-DGの手術風景 Fig.10:TIL-DG後、退院時の創部

腹腔鏡下手術後の入院は平均7-8日であり、クリティカルパスに従って治療が行われております(Fig.11)。

Fig.11:腹腔鏡下胃がん手術のクリニカルパス

治療成績

当科では年間120-40例の胃がん手術が行われており,最近では約80%が鏡視下手術となっております。
当院でこれまで10年間に施行された約700例の腹腔鏡下胃がん手術の治療成績は、詳細に検討し、安全性・根治性を確認しております。
 腹腔鏡手術は保険診療で認められている治療です。しかし、進行癌や胃全摘術への適応は、一部の施設に限られているのが現状であり、当科でも引き続き慎重に対応させていただきます。 (Fig12-15)

Fig.12:当院の胃悪性疾患手術症例の年次推移 Fig.13:当院の腹腔鏡下胃切除術の年次推移
Fig.14:当院の腹腔鏡下胃癌手術の長期成績 Fig.15:主な腹腔鏡下手術の短期成績

化学療法

進行胃癌の治療の主軸となるのは手術ですが、近年では化学療法(抗がん剤治療)を手術前後に加えることで治療成績が向上しております。化学療法には、手術後再発予防目的に行われる補助化学療法と、切除不能や再発時に行われる化学療法があります。補助化学療法は多くが外科で行われております。切除不能や再発に対する化学療法は、消化器内科の化学療法担当医との連携で治療が行われております。 使用する薬剤はS-1製剤が胃癌に対する化学療法の第一選択となっております。単剤投与においても30~40%の効果がありますが、シスプラチンやタキサン系薬剤を加えることでさらに上乗せ効果が期待できます。この他CPT-11なども使用しております。さらに近年では、分子標的薬であるトラスツズマブが保険適応となったため、効果が確認された患者様には使用しております。 S-1は内服薬のため、多くの患者様は外来で治療を継続することができますが、 点滴による化学療法を行う場合には3-7日程度の入院をお勧めしております。 化学療法開始時やその効果判定において、正確な診断を行うために審査腹腔鏡検査も積極的に行っております。検査では腹膜播種や肝転移などの非治癒因子を確認し、非治癒因子が無い場合には手術適応が出てくる場合もあります。審査腹腔鏡検査は最小限(1cm程度)の傷で終了しますので、2-3日で退院ができますし、繰り返し行うことが可能です。化学療法を継続し、3回目の腹腔鏡検査で腹膜播種が消え、手術で取りきることができた患者様も数名いらっしゃいます。どんな進行癌であっても決してあきらめません。

 

ご自身や家族の胃癌の治療で不安をかかえる方、低侵襲治療(腹腔鏡手術)や胃温存手術)に興味のある方は、是非ご相談ください。 詳しい説明は毎週(水)(金)の胃疾患専門外来(担当:薄井)で行っております。 他院からのセカンドオピニオンも随時受け付けております。

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