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胃癌

胃癌は日本の悪性疾患における死亡数の第3位を占めており、(男女合計4万6千人 男性第2位、女性第4位:厚生省統計情報部「2016年人口動態統計より」)、悪性疾患の中心をなす疾患です。

当院における胃癌治療は、日本胃癌学会が作成した胃癌治療ガイドライン(2018年1月改訂)におけるアルゴリズムに基づいて行われております(Fig.1)。この癌の進行度は、癌の深達度転移の程度で決まります。

 

Fig.1: 治療ガイドラインにおける治療適応

深達度(Fig.2): 癌は一般に粘膜に発生し、徐々にその深さを増していきます。

粘膜下層までにとどまる癌を早期癌と呼び、それより深い癌を進行癌と呼びます。

早期胃癌の内、分化度の良い粘膜内癌(T1a)や粘膜下層500μmにとどまる癌(T1b1)であればリンパ節転移はほぼありませんが、さらに深く粘膜下層に浸潤する癌(T1b2)ではリンパ節転移が15-20%となります。一方、進行癌のリンパ節転移は40-50%です。

 

 

Fig.2 癌の深達度分類

転移の程度: 胃癌はその進行とともに、胃の周囲へ転移が始まります。

肝臓や肺などへの転移を血行性転移、胃の周囲に存在するリンパ節への転移をリンパ行性転移、胃壁外へ癌細胞がまき散らされるものを腹膜播種とよびます。

上記した深達度Tとリンパ節Nを調べることで進行度が決まります。

また、肝転移などの血行性転移や腹膜播種が見つかると、遠隔転移と診断されStageⅣとなります。

 

診療の実際

初診までの流れ

健康診断の胃透視検査や内視鏡検査ですでに癌が診断されている場合と痛みや食欲低下などの症状で受診される場合があります。

既に紹介元の施設(診療所や病院)で胃癌の診断がついている場合には、その進行度・治療法にあわせて消化器外科もしくは消化器内科の外来へ紹介となりなす。外科への受診は、毎週水・金曜日に胃疾患専門外来がありますので、専門外来へ受診されることをお勧めいたします。

初診から検査・治療まで

初診外来では、これまでの経緯をお聞きし、検査予約を行います。

既に紹介元から画像検査などを持参された場合には、検査結果を見ながら治療方針の説明ができる場合もあります。

当科で検査を開始する場合は、初診当日にCT検査を行い、まず転移検索を行います(StageIII-Ⅳと診断されれば、同日消化器内科の化学療法外来への受診を手続します)。

さらに、胃カメラなど必要な検査を約10日間で終え、外来で治療方針を説明致します。治療方針にご了承が得られましたら、入院予約となります。初診から最短で2週間程度、遅くとも3週間以内には治療となります。

検査の過程で内視鏡治療が可能と判断された場合には、速やかに消化器内科の内視鏡治療専門医へ紹介致します。内科・外科は常に連携をとっており、どちらの科を受診しても治療方針に偏りはありません(外科を受診したらなんでも手術をしてしまうわけではありませんから、ご安心下さい)。

治療前検査

胃カメラ:

 

胃癌のできている場所、深達度の診断を専門医(日本消化器内視鏡専門医)が行います。

使用する機材は、最新型ハイビジョンスコープ(EVIS LUCERA ELITE)で、拡大内視鏡やNBIを用いて、正確な深達度・範囲診断を行います。 

ここで、手術適応と診断した場合、さらにクリップマーキングを行います(Fig.3)。

 

Fig.3:内視鏡下クリッピング

*当科では、多くの症例が腹腔鏡手術の適応となりますので、手術中は事前に打ったクリップを内視鏡で確認しながら胃切離を行います。

胃透視検査:

口からバリウムを飲んで、胃癌の位置・大きさを確認します。

CT検査:

 

東芝製330列・マルチスライスCTを用いて1㎜間隔で撮影を行い、正確

な転移診断を行います。また、この検査画像を用いてCTangioglaphyを作成します。CTangioglaphyでは、胃周囲の血管走行を確認し、術中にこの画像を見ながら手術を進めるナビゲーション手術を行っております。腹腔鏡手術では胃や胃の周りの血管を手で触ることができませんが、ナビゲーション手術を行うことで、血管走行の誤認を防ぐことができます(Fig.4)。

 

Fig.4 Navigation Surgery用の3D-CTA画像

大腸スクリーニング検査:大腸に癌が無いか、また胃癌が大腸に浸潤していないかを調べるために行います。大腸のバリウム検査もしくは大腸カメラを行います。

この他、血液検査や胸のレントゲン・心電図などを行い、治療の準備を行います。

 

入院

 

原則的に胃癌治療の患者様は、手術前日に7D病棟へ入院していただきます。

主な治療法

内視鏡治療

当院では消化器内科が担当しております。切除の方法には、簡便なEMR(内視鏡的粘膜切除術)や広範囲の切除も可能なESD(内視鏡的切開・剥離法)があります。

ガイドラインでは、深達度T1a N0の分化型が標準的な内視鏡治療の適応とされていますが、適応拡大病変に対しても内視鏡治療が行われており(Fig.5)、年間約90例の治療が行われております。

 

Fig.5:内視鏡治療の適応

切除した胃癌の病理検査の結果によっては追加手術が必要となる場合もあるため、治療前後に消化器内科担当医より詳しく説明をしております。

手術

内視鏡治療の適応から外れる早期癌と進行癌が対象となります。

癌の発生した場所、大きさによって切除する範囲が変わります。当科では幽門側胃切除、噴門側胃切除、胃全摘術を主に行っております(Fig.6)

 

Fig.6 基本的な切除の種類

胃は食事を貯留し消化をする大事な臓器であり、なるべく温存を心掛けております。

特に近年、80歳を超える高齢者の手術患者様も増えており、胃全摘術はなるべく回避するよう治療を行っております。癌の治療ももちろん大事ですが、食事の楽しみも大切なものと考えております。 

胃癌の手術は、切除後に新たにつなぎ合わせることが必要です。これを再建術と呼びます。幽門側胃切除術では、ビルロートI法とルーワイ法のどちらかで再建を行います。当院では、再建に多少手間がかかるものの、残胃炎の少ないルーワイ再建を主に行っております。

 

また、噴門側胃切除術では、主に食道残胃吻合を行っております。切除範囲が1/2と広くなる場合には、逆流性食道炎を予防するためにダブルトラクト再建も行っております。

胃全摘術ではルーワイ再建を行います。ルーワイ再建は国内での標準術式です(Fig.7)。

 

Fig.7切除後の再建法

リンパ節郭清

胃癌の手術では、転移の可能性があるリンパ節を胃と共に切除します。

このリンパ節切除のことをリンパ節郭清と呼びます。早期癌に対して進行癌では、その郭清範囲が広くなるため、同じ幽門側胃切除であっても手術時間は進行癌のほうが多くかかります。また、リンパ節郭清を目的として膵臓や脾臓を一緒に切除することもあります。リンパ節郭清はその手技の如何より術後の合併症や余命にかかわる、胃癌手術の要であり、当科では開腹手術・腹腔鏡手術のいずれにおいても丁寧・慎重に行っております。

化学療法

進行胃癌の治療の主軸となるのは手術ですが、近年化学療法は手術以上の進歩を遂げております。手術前に行われる術前化学療法(NAC:Neoajuvant chemotherapy)により、大幅な主要縮小(Down stage)を得られる症例も多くみられるようになり、術後補助化学療法と合わせて根治性の向上が大きく期待されております。また初診時に切除不能と診断される患者様や術後再発が確認された患者様に対する化学療法も新薬の登場により、治療成績が改善されてきました。1次治療の中心となるS-1製剤は単剤投与においても30~40%の効果がありますが、シスプラチンやタキサン系薬剤、さらには近年適応となったオキサリプラチンを加えることでさらなる上乗せ効果が期待できるようになりました。そして分子標的薬の併用も行われるようになりました。2011年にトラスツズマブ、そして2015年にラムシルマブ、2017年にはニボルマブが保険承認され、その効果を実感する患者様が増えております。これらの化学療法の多くが消化器内科で行われておりますが、適応に関しては積極的に消化器外科も介入しており、化学療法開始時やその効果判定において正確な診断を行うために審査腹腔鏡検査も積極的に行っております。検査では腹膜播種や肝転移などの非治癒因子を確認し、非治癒因子が無い場合には手術適応が出てくる場合もあります。審査腹腔鏡検査は最小限(1cm程度)の傷で終了しますので、2-3日で退院ができますし、繰り返し行うことが可能です。化学療法を継続し、3回目の腹腔鏡検査で腹膜播種が消え、手術で取りきることができた患者様も数名いらっしゃいます。どんな進行癌であっても決してあきらめません。

 

ご自身や家族の胃癌の治療で不安をかかえる方、低侵襲治療(腹腔鏡手術)や胃温存手術)に興味のある方は、是非ご相談ください。

詳しい説明は毎週(水)(金)の胃疾患専門外来(担当:薄井)で行っております。

他院からのセカンドオピニオンも随時受け付けております。

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